2009.06.19 Friday

退職。

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    今朝、終わった。


    4年と3ヶ月(こうやって書くと短いなー)、聖橋を目にするのも苦痛だったのともお別れ。

    新任者オリエンテーションで、接客業並みの腰の低さに、同期が「患者様」を「お客様」と言ってしまい、「いや...わかるよ、その気持ち」とあきれかえってたあの頃から4年。

    夜勤で初めて仮眠にストレッチャーをあてがわれた時、煌々と灯る非常灯が私のおでこを照らして眠れなかったことや、
    二日酔いで這いながら職場へ行き、マスクを二重にして、息を止めてシャンプー介助したことや、
    大事なデートの前に汗だくになっておむつ交換した同期と制汗剤を飛ばし合いしたこと、
    同僚とのいろんなことを思い出した。

    急変した患者さんが、翌日回復してむくみがすっきりとれて名前を呼んでくれたこと、
    ホスピスに転院して最後を看取った奥さんが、病棟に挨拶に来てくれてロビーで一緒に大泣きしたこと、
    視力の回復が望めない患者さんに、最後までほんとのことが言えず、「目にいいからってプルーン食べてるの。タムラさんもどう?」と差し出されて受け取れなかったこと。
    たくさんの患者さんに「ありがとう」という言葉を数えきれないくらいもらった。

    こちらこそ、ほんとにありがとう。
    ここでの貴重な4年間を、大切にしていきます。
    2009.03.14 Saturday

    憂鬱な朝、春近し。

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      休日の日勤の朝ほど憂鬱な日は無い。
      特に前日に花金の人たちと飲んだ朝なんかは、すこぶる自分が可哀想な人に見える。

      はぁー、休日なのに...私だけ出勤...
      御茶ノ水に降りて、重い足取りで階段を上がる。
      はぁー、みんな寝てるのに...私だけ出勤...
      改札を出ると風が冷たくて、ぶつくさ独りごちる。

      人の少ない駅前をとぼとぼ歩いていると、
      聖橋の上から神田川の堀の縁に、梅の花がぽつぽつ見えた。
      あー、春が来たー。
      遠いから、白くてはかなくて、小さい。

      今日の病棟のお昼のデザートはイチゴだった。
      手探りで頬張った患者さんのそれは、まだ少し甘酸っぱかったようだ。
      まぁー、春が来たねー。
      頬をゆるめながら、その人は口を小さくすぼめる。



      梅が来て、桃に、桜。
      トーキョーの開花宣言は3月20日。
      あら、ほんとに、もーすぐそこね。

      2008.11.24 Monday

      冬の朝焼け。

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        朝6時、一斉に廊下の電気を点けて足下灯を落とす。
        多数室から順に入り、挨拶をしながら部屋の電気を点けていく。
        音を立ててカーテンを開けると、布団の中で息を潜めていた患者さんの、「うー」と小さく伸びをする声が方々から聞こえる。
        一気に部屋に光が入って、カーテンの外側にたまっていた冷気も一気に部屋に満ちる。

        冬の朝は天気がいいと、多数室の窓から筑波山が見える。
        澄んだ北西の空の先に、深いシルエットが浮かび上がってくる。なだらかな傾斜を左右に持ち、北西の窓一面を使って悠然と佇む筑波山は、夜勤明けの朝、ほんとうに美しい。

        各部屋に筑波山を披露してたら、時間が思いのほか過ぎていた。
        一通り回り終えてナースステーションに戻ってくると、筑波山の輪郭はもうあやふやになっている。8時近くになって日差しに強みが出てくると、空が白くなって山はたちまち隠れてしまう。

        ロの字型の構造上、山が見えない患者さんをロビーへ誘う。その人は治療上うつ伏せになっていなくてはいけないのもあり、いつも俯いておせんべいばっかり食べていた。
        「今日は筑波山がきれいですよ。」
        眼帯に朝焼けが反射する。その人はまぶしそうに「きれいだね。」と言った。



        外はすこぶる寒いだろう。
        ビルの間に厚手のコートの肩をこわばらせて歩いている人々が見えた。
        2008.04.11 Friday

        遅刻。

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          「お地蔵さん、聞いてや、聞いてや」
          「なんや猿はん」
          「ヨシコはん今日仕事遅刻しはったらしいで」
          「ほんまぁ。あっほやな」
          「しかも、7時30分やのに6時30分やと思ってのんびり朝からホットパックやってたら、J-WAVEがいつもの番組と違うのに気付いたらしいで」

          遅刻って残酷よね。
          どんなに弁解しても、言い訳にしか聞こえへんし。まぁ、言い訳やねんけど。

          でも私かて呑み惚けてたわけじゃなくて、昨日かて20時過ぎに仕事から帰って一滴も呑まずに家で夕飯作って食べて、翌日のお弁当まで作って、お風呂入ってマッサージして11時に寝たんやで。目覚ましももちろんかけて。
          でも起きれへんかってん。連日超過勤務が続いてて疲れてたんや。

          しかも今朝は私がホームに上がったと同時に中央線止まって、いつもは25分で着く総武線に60分寿司詰めで、駅に停車する度にいろんなポーズの空中椅子になって太ももぷるぷるいわせて、おじさんの脂ぎったうなじに顔を押しつぶされて、傘の先でストッキング破られて、雨の中走ってきたんやで。

          でも、朝から戦場を駆け抜けてきた私に師長さん恐かったーーーー。
          脳天に突き刺さる言葉。痛すぎて覚えてない。
          うーーーちゃうねんちゃうねん!って言いたい。
          どんなに泥酔しても這って出勤し、無遅刻だった私が、なんで何でもない日に起きれなかったんやろか。
          気合い入れる為に自分にお尻注射しようかと思ったけど、何とか冷静に業務遂行。

          今日は母さんの誕生日なのに。
          娘はトーキョーでこんなことに一憂しとります。

          オチはないただの愚痴日記になってもた。
          2007.12.23 Sunday

          仕事、つれづれ。

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            この前の休みは空が蒼かった...な。



            ここ毎日いやいや出勤してる。
            まず、ICUの圧迫感がだめ。
            そしてモニターのアラーム音がだめ。
            んでもって他の看護婦さんのデキる動きがまたこれだめ。

            おろおろして、心臓ちぢこまって、怒られて...
            あせあせして、無駄な動きして、突っ込まれて...
            もう頑張りたくない、気張れないと自分と葛藤しながら大奥ICUを小走りしております。
            毎晩家帰ったら、ぐで〜っとなって大の字になってBeer。
            消耗してばっかで何も生産的なことしてないわ。

            でも、まぁこんな時期もあるさととぼとぼ阿佐ヶ谷駅をおりたなら、
            街はすっかりプレクリスマス。
            仕方ないから今夜は独りプレもも肉とプレEBISU。

            ↑読み返したら何と湿っぽいつれづれ日記。でも意外と元気です。

            2007.07.27 Friday

            私の仕事。

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              この前の日勤、
              その人はナチュラルコースだったけど、やるだけのことはやった。
              家族は虫の知らせか、いつもより早く面会に来た。
              同期はひたすら耳元で名前を呼びかけ、
              私は冷たくなっていく足をさすっていた。
              私たちよりも付き合いの長い医師は「よくがんばった、よくがんばったよ。」と手をさすり続け、
              研修医は絶えきれず涙を流した。

              呼吸が止まった瞬間はみんなその場に立ち尽くした。
              モニターではペースメーカーだけが規則的に信号を送っていた。

              引き継ぎ前にばたばたし始め、すべての事が終わったのは消灯前。
              みんなどうしようもないくらいに疲れきってた。

              すると師長が突然、
              「さ、みんなでちょっと水分補給しにいきましょう。」
              と言い出した。
              何を言い出すのか、この人は...
              「このまま帰ったらあんたたち何も食べれないでしょ、さっ行くわよ」
              有無を言わさず残ってた私たちは連れて行かれた。

              「ほら、しっかり食べて。」
              お造り、シーザーサラダ、さつま揚げ、メンチカツ、だし巻き卵...
              何も喉を通らないと思ってたけど、いざテーブルに並ぶと、私も先輩も同期も後輩も夢中で食べ始めた。
              それぞれの恋愛話やたわいのないことを話してたらみんなの顔がだんだんほころんできた。
              ぐいっとビールを流し込む師長。
              「明日も他の患者さんが待ってるわよ。」
              私はうなぎご飯を頬張りながら泣きそうになった。
              うなぎが丁寧に蒸されていてすごくおいしかった。

              確かにこのまま帰ってたら一人ベッドの上で臥せってたかもしれない。
              家に帰って玄関に塩をまいた。
              明日からも引き締めてやってかなくちゃ。
              2007.04.27 Friday

              ある日のツイてない夜勤。

              0
                この間の夜勤は渋かった。
                一本早い電車に乗ろうと思ったら、曲がり角で激しく転倒。
                通行人はアスファルトに大の字で唸ってる私をチラ見して見えぬ振り。

                中央線の中、出血した手のひらで鞄をさぐるとロッカーのキーを忘れた事に気づく。
                しっぽり怒られるんですよこれが。看護部の上の人はこういう忘れ物がほんとに大嫌いみたいで...
                大奥の部屋でマスターキーを手に入れるまでがうんたらちんたら長かった。

                で、やっとこさ着替えて病棟まで上がったら緊急オペが2件も。
                しかもほぼ確実にオペ後不穏になると言われてた人が今日全身麻酔なんだってさ...

                今夜はたぶんツイてない。

                夜はその人の様子を伺って何回も訪室した。
                不穏になられたら私の朝はないと思って、行く度に精一杯のねぎらいの言葉をかけて、マッサージしたり、お水をまめに飲ませてあげたりした。

                そして暴れること無く無事に朝を迎えた。
                やりきった感いっぱいで、カーテンを開けて朝日を入れる。
                その人はお小水の管を抜いてもらって仰向けになっていた。
                蛍光ピンクのぴちぴちブリーフが目に入った。しかも前みごろが下半身だけわざとはだけている。
                「...ちょっと前直しましょう。お腹冷えても寒いですし。」
                「なんで?いいよ、このままで」

                ...
                こっちが困るのよ!!採血するときちょうど鼻先にブリーフがくるのよ!

                でも、その人は絶対直そうとしない。ブリーフ露で仰向けになってしれっとしている。
                ここで暴れられたら今までの踏ん張りが...
                うぅ、あと少しだわ。
                仕方なく鼻先に悔しくブリーフを感じながら採血した。
                わざともそもそ動いたりされて。
                セクハラだ、これ。でも、やりきればいいんだ、やりきれば。と自分に言いきかせた。

                なんとかツイてない夜勤が無事終わった。



                ガンバッタ、ヨシコ。
                2006.12.23 Saturday

                ナチュラルコースの果てに。

                0
                  休み明けの朝、Tさんの訃報をきいた。
                  最期は安心したかのように、心電図の波形がゆっくりフラットになっていったと。

                  鼻の奥が熱くなった。

                  あぁ、あと1日居てほしかった。
                  私はまた会えると思ってた。

                  兄弟と歩んだ80年。
                  奥さんと過ごした60年。
                  お孫さんたちとの20年。
                  そして、私たちナースとの40日。
                  救急車で来院してから、今日までTさんは、ほんとよく頑張った。

                  お小水の1日量が、がっくり下がった夜勤。オムツに重みを感じたとき、小躍りしながら計測器に走った。

                  点滴を自分で抜いちゃった早朝。部屋に行ったらシーツが血まみれだった。「一滴の血も無駄にしないで!」と先輩から使命を受け、健常者なら1分あればできる止血を1時間続けた。

                  Tさんの痰の絡んだ声を思い出す。
                  酸素マスクや点滴を外さないように、腕に抑制帯までつけたこととか...やっぱり一回でも家に帰してあげたかったなとか...
                  私たちのやったことは果たしてよかったのかどうか。
                  そんな事ばかり考える。

                  今日は忙しいのに、手術が何件もあるのに。

                  Tさんの居た3号室には新しい患者さんが入っていた。

                  Tさんはいない。確かに時は過ぎている。
                  でもナースコールが鳴ったら、みんな真っ先に3号室を見ていた。
                  2006.12.09 Saturday

                  ナチュラルコース。

                  0
                    私の仕事は、医師の指示のもとにやってるんやけど、そのベースとなるものに指示書というものがあります。
                    例えば...
                    発熱時:1)38度以上 クーリング 2)ボルタレン挿肛
                    疼痛時:1)☆☆を内服 2)××を筋肉注射
                    清潔ケア:シャワー可、入浴不可
                    食事:塩分制限常食

                    などなどと、患者の生活全てが指示されていて、基本はそれにそって仕事をしてます。

                    この間からTさんに、
                    急変時:ナチュラルコース
                    という指示が追加になった。私はこの仕事をして初めてこの言葉をみたとき、何かエステの癒しコースかと思った。
                    ナチュラルコース、ナチュラルコース、ナチュラルコース...
                    何度もその言葉を頭の中で復唱してみても、やっぱりエステにしか思えない。

                    ナチュラルコース...急変時、延命治療(心臓マッサージ、気管挿管など)を行わないこと

                    Tさんは、悪性腫瘍の転移が進行してはいるが、ほんとだったら昨日か今日退院する予定で、看護計画も退院に向けてのプランを上げて関わっていた。なのに、元気になってきたと思ったら、いきなりお小水が真っ赤に染まりだして、お通じにも伝播して、あっという間に全身関節痛で立ち上がれなくなってしまった。輸血をしても、しても、入ってきた誰かの血液はTさんの体から流れるように出ていく。

                    そして、退院の目処は立たなくなり、いきなり指示にナチュラルコースが加わって、看護目標がガラっと変わってしまった。

                    『今週中に症状が軽減し、退院できる』から『安楽に最期を迎えられる』に。

                    Tさんにも全てインフォームドコンセント(医師からの病状説明)がいったみたいで、本人もナチュラルコースを希望したらしい。
                    ナチュラルコースを知った後、Tさんの体を拭きに訪室した。お昼ご飯のときまでは、退院後の生活の話をしてたのに、何か話そうと思ってもナチュラルコースが頭をよぎって何の話をしたらいいかわからない。Tさんの体は日に日に皮膚全体が水を含んで重そうで、四肢には無数の紫斑が目立ってきた。夕方には酸素が1リットルアップした。
                    私は、Tさんの背中を拭きながら神戸の夜景の話をした。地形の話も、地震の話も。会話がとぎれないように、とぎれないように、思いつく限り神戸の話をした。Tさんは痰を絡ませながらも相づちをうち、自分家のある東小金井の話をしてくれた。
                    西日がたるんだTさんの背中を照らしてた。

                    「そろそろ土地の片付けもしないとな...」
                    奥さんにはそう漏らしてたらしい。

                    Tさんはゆっくりゆっくりナチュラルコースの準備に入っている。
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